太極拳で筋力アップ!

 太極拳と言えば、ゆったりとした独特の動きが印象的だ。本格的なのは、ちょっと難しそうだけど……

動きゆったり

写真 椿姫彩菜さん太極拳のポーズを披露するタレントの椿姫彩葉さん=栗原怜里撮影

 まっすぐに立ち、片足を1歩後ろに引いて、ゆっくりと重心を移動させる。両手はまるで空気を包み込むかのように、体の前でふんわりと大きく円を描く。

 しなやかな動きを披露してくれたのは、タレントの椿姫彩菜(つばきあやな)さん(24)。太極拳の動きを取り入れたフィットネスのDVDを4月に発売した。

 太極拳はもともと武術の一種だが、老若男女問わずできる健康体操として中国で広く普及している。足の運びなど本来は24種類の細かな動きの決まり事があるが、DVDでは専門家の指導の下、「ゆったりとした動き」の基本的な部分を参考にしている。

 「無理な動きがなく、体が硬い私でも大丈夫」なのがお気に入りとか。飛んだり跳ねたりする激しい動きはないが、1日5分程度で、「じんわりと汗ばむ」ぐらいが良い感じなのだそうだ。得意の格好をお願いしたところ、手のひらを前に出す攻撃のポーズ「押し手」で決めてくれた。

 でもそんな緩い動きで、効果の方はどうなのだろう。福島県立医大教授(公衆衛生学)の安村誠司さんは、「ゆっくりと足を上げて重心を移動する太極拳の動きは、背骨や腰を支える筋肉を鍛える効果がある」と話す。

 福島県喜多方市は、市役所に「太極拳のまち推進係」を設けるなど、太極拳を通じた健康づくりに熱を入れている。高齢者の転倒予防にと、安村さんらの監修で、「太極拳ゆったり体操」を作成した。静かな音楽に合わせ、両手を前に出して軽くひざを曲げたり、片足を前に出してかかとをつけ前かがみになったり。65歳以上の高齢者に5か月間試してもらったところ、「歩く速度が約1割アップした」と安村さんは話す。

心肺機能向上

 30年近く太極拳の研究に取り組む雪谷大塚クリニック(東京・大田区)院長の雨宮隆太さんは、「ゆっくりした動きで鍛えられる筋肉には、酸素を多く取り込む働きがあるため、心肺機能を高めることができる」と解説する。

 太極拳は呼吸法にも特徴がある。深く吸って長い時間をかけてゆっくりと吐き出すことで、「気持ちを落ち着かせるリラックス効果も期待できる」(雨宮さん)。同クリニックでは、太極拳をしない人にも呼吸法の効果を感じてもらおうと、月1回、「呼吸法教室」を開いている。 (利根川昌紀)

「後ろ歩き」足腰に効く

図 後ろ歩き

 太極拳の動きを取り入れた「後ろ歩き」で足腰を鍛えよう。

 〈1〉片足を上げて後ろに出し、重心は軸足に置いたまま、つま先で着地〈2〉軸足のひざを曲げ、後ろに出した足のかかとを地面につける〈3〉後ろ足にゆっくりと重心を移す〈4〉前の足を後ろに引き寄せる。

 左右の足を替えて繰り返す。1歩につき5秒程度かけてゆっくり行うと良い。5分間を目安に続ける。(雨宮隆太さん監修)

200972  読売新聞 夕刊)